一度だけ、夢の中で見たことがある間宮さんの笑った顔は、現実世界でも夢の中の通り……というか、あたしの妄想の通りのもので、見れば見るほど少年っぽく、あどけない。
20歳の大人に向かって、さすがにそれはないだろうとは思うものの、しかし、屈託なく笑う、という表現がぴったりと当てはまる笑顔は、あたしの笑顔を誘い、間宮さんはそれを「見れば見るほど面白い顔だ」と、また豪快に笑う。
不思議なことに、沈黙の間すらなかった。
普段は、どちらかといえば、あたしのほうから話しかることが多く、間宮さんは、1回にそれほどたくさんは喋らない人だ。
けれど、今夜に限っては逆で、間宮さんは相づちを打つ暇さえ与えてくれないのか、と驚くほどに饒舌で、いつの間にか日付が変わっていたことにも気づかないまま、このひと夏の出来事を肴に、飲んで喋って、ケラケラと笑う。
ああ、間宮さんは民宿を出て行く気なんだ……。
そう漠然と思ったのも、つかの間。
「おい、船漕いでんぞ」
「……、……え、あ、すみません」
「ったく。寝るなら布団に行けよ? お前を抱えて階段を上るのはキツすぎる」
「うーん、分かってますよ……」
「おい、ここで寝るなって」

