「……て、ことだ」
「……」
何時間にも及ぶ話の最後を、そう軽めに締めくくった間宮さんは、写真立てをあたしの手からそっと抜き取り、改めてじっと眺める。
思わず、間宮さんのその手に自分の手を重ねたい衝動にかられるけれど、それをしてもいいものなのかどうか、やはりすぐには判断がつけられなかったあたしは、宙に浮いた手を自分の膝に置くことで、衝動を追いやった。
間宮さんが持っているこの写真は、間違いなく亡くなった秀斗さんという仲間の形見だろう。
ご家族から譲り受けたという直筆の遺書も、おそらく、あの間宮さんの座高ほどもある大きなリュックサックの中に、そっと忍ばせてあり、一緒に旅をしてきたのだろうと思う。
とても、とても……重い話だった。
あたしが想像していたものより、遥かに密度が濃く、重いもので、宇宙にあるというブラックホールを思わせるような、そんな話だ。
一番触れられたくない部分の話を、どうしてあたしに聞かせてもいいとして語ってくれたのかは、間宮さんのことだから、絶対に理由を説明してはくれないだろうけれど、それは今は、一番に考えなくてはならないことじゃない。