「……ほとんどっていうか、全部、俺に宛てられたものじゃないですか。バカだ、秀斗は」
「本当にバカな息子だよ。だから私たちは、この遺書を君に持っていてもらえたら、と思う」
読み終わるのと同時に言うと、父親は少し笑って、再度、俺に遺書をもらってほしいと言う。
秀斗の気持ちは、遺書に書いたことが全てではなかっただろうけれど、俺が知らない間の秀斗の様子は、だいたい分かったつもりだ。
どんなに辛かっただろう、どんなに自分を責めただろう、どんなに惨めだっただろう……そう思いはじめると、気持ちが涙となって溢れ出る。
だからこそ、なのだ。
「では、遠慮なく頂きます」
深々と頭を下げ、秀斗の家族3人に言う。
「そうしてもらえると、ありがたいよ」
「はい」
遺書を譲り受ける決断に、迷いはなかった。
俺が持っておかなければならない、そう思ったし、家族がもらってほしいと言ってくださっている限りは、俺に断る理由は見当たらない。
死にたいと思った直接のきっかけは、そうだったのかもしれないが、知らず知らずのうちに秀斗を傷つけ、追い詰め、あんなに心優しかった秀斗を変えてしまったのは俺だったのだ。
だからこそ、俺が持つべきなのだと思う。
……秀斗を死に追いやった、その戒めとして。

