「さて、と。やりますか」


客室の掃除は、案外重労働だったりする。

まずは起きたときのままになっている敷き布団や枕のカバーを外し、ベランダに干したり差し替えたり、カバーは部屋の外へ出す。

それが終われば、天井や電気の傘からハタキをかけていき、畳を掃除機がけして、最後に固くしぼった雑巾で拭けば終わり。


机は片付けなくもていいということで、その点はあたしも少し楽ができるけれど、洗面台の掃除が一番気を使うところだ。

鏡をピカピカに磨くのはもちろんのこと、蛇口やその周りにも水滴一つ残さないのがあたしのこだわりで、軽く10分はかかってしまう。


「よしっ。綺麗、綺麗」


そうして、ピカピカになった洗面台や部屋を見渡して満足していると……。


「おい、まだいたのかよ。掃除するのがそんなに楽しいなんて、変わった奴だな。ただし、机には触っていないだろうな?」

「うわっ!……し、失礼な。触ったりなんかしていませんよ、指の一本だって!」

「ならいい」


朝ご飯を食べ終わって戻ってきたらしい間宮さんが、いつの間にか、開けっ放しにしていたドアに寄りかかりながら腕組みしていた。