残された家族は、父親と母親と、それから、年の離れた姉が1人で、いずれも内陸や県外に仕事に出ており、昼夜を問わず働いているため、秀斗を最初に発見したのは、仮設住宅の隣に住む斉藤さんというご老人だったらしい。
秀斗の親父さんから、葬儀の日取りが決まったと連絡を頂いた際、そういう話も少し聞けて、かねてから、どうして家族の誰も、秀斗が仮設住宅を出て行ったことに気づかなかったのだろう、という疑問は、そこで消えることとなる。
その話の流れで、葬儀のあとは自宅に来てほしい、と言われていた俺は、葬儀会場から仮設住宅へと車を走らせ、そちらに向かう。
運転席から見える海は、今日も穏やかそのもので、しかし俺の心の中は、それとは対称的に重苦しいもので、すぐに海から目をそらした。
「今日はありがとうね」
「……いえ」
住宅の中に通してもらい、麦茶を用意してくださった秀斗の母親が台所から戻ると、家族3人と俺とで、改めて小さなテーブルを囲む。
部屋中に服についた線香の匂いが漂っていて、ああ、もう秀斗はいないんだ……と、こんなところでも、敏感に秀斗の死を感じてしまう。
すると、秀斗の母親が口を開く。

