しかしながら、その答えは、きっとどこにもないだろうということも、とっくに知っている。
だからなのだ、こんなにも胸が痛いのは……。
そうして、どこにも行き場のない気持ちを抱えたまま、俺はそこで夕暮れ時までを過ごした。
やがて太陽は西の空に沈んでいき、辺りには、夜の気配がひっそりと忍び寄ってきている。
「……じいちゃんが心配してる」
帰ろう、家へ。
誰に言うでもなく、ぼそりと呟き、ジーンズの尻についた草や土を簡単に払い落とすと、のそのそと車に乗り込みエンジンをかける。
本来、こんなに遠出をするつもりはなく、昼過ぎ頃か、遅くても夕方までには戻るつもりだったし、こんなときだけれど、腹も減っている。
家族には十分に心配をかけてはいるが、せめてこれ以上の心配は、かけさせてはいけない。
それくらいの分別は、いくら寝ておらず、頭の回転が鈍くなっているとはいえ、ついていた。
車を発進させる前に家に電話をかけ、おおよその帰宅時間を告げて、海をあとにする。
ああ、もう夏だ。
とっても。
潮の匂いに混ざって、夏草の青々とした匂いが鼻の奥を刺激して、また涙が流れた。

