秀斗と最後に会ったときとさほど変わっていない街の様子には、落胆という言葉以外に思いつく言葉はなかったが、やはり、どんなに様変わりしてしまっても“ふるさと”なのだろう。
潮の匂いを含んだ空気を肺いっぱいに吸い込んだとたん、なぜかほっとした。
これだから人の心は複雑だ、とつくづく思う。
この更地になってしまった景色に慣れてはいけない、ときつく心に言い聞かせながらも、太陽の光を海面に反射させている穏やかな海を見てしまうと、楽しかった思い出ばかりが蘇る。
小さい頃、家族で行った潮干狩りや海水浴、海の家で買ってもらった、かき氷の味。
小中高生にもなれば、それぞれの年代で仲のよかった友だちや仲間と海に行き、日が暮れるまで遊び通したり、恋を知れば、当時好きだった子と、こっそりデートをしたりもした。
そうしてみると、海は何も、たくさんの人の命を奪った嫌な思い出ばかりを植え付けていったわけではないのだ、ということが分かる。
夏の太陽を浴び、思わず、服のまま飛び込み、バシャバシャと水しぶきを上げて泳ぎたくなるくらいに穏やかな海は、見ていると心が和む。
でも、だからこそなのだ。
「……っ。どうして……」

