かけぬける青空は、きっと君とつながっている

 
本当は、海に行きたいなどとは、これっぽっちも思っていないし、むしろ、行きたくない。

大切な仲間たちを一瞬で奪った海なんて、津波のあとの、建物が根こそぎ流され、更地になってしまったふるさとなんて見たくもないのだ。

しかし、海に向かっているのだと気づいたときには、いくつも山を越えていたあとで、道路標識にも懐かしい地名が大きく印字されており、今さら引き返すのは悔しい距離でもあった。


「……ちくしょう」


何に対しての“ちくしょう”なのか。

自分でもよく分からないが、ここで引き返したら負けだ、そんな気持ちになり、そう吐き捨てると、一気にアクセルを踏み込む。

軽トラの荷台に積んである、祖父が畑仕事用に使っている農耕機具が揺れる音が、やけに耳障りだが、なぜか、いっそ海まで行って眺めてやろう、という気持ちにさせるから、不思議だ。


それからしばらくの後、海まで出た俺は、適当な場所で車を止め、海と街を同時に見渡せる高台から、宣言通り海を眺めてやった。

街は、海へ向かうにしたがって建物が減っていき、ところどころに残っている建物も、津波にさらわれ、鉄筋の骨組みだけと化している。