かけぬける青空は、きっと君とつながっている

 
秀斗は一体、俺に何を言いたいのだろうか……。

しかし、知らないことは罪だ、と言った秀斗の真意がなかなか分からず、俺はただ、秀斗が再び話しはじめるのを待つしかなかった。

やがて、1秒が数分にも感じられるような長い沈黙のあと、秀斗はひとつ大きく息をはくと、覚悟を決めたように言葉を紡ぎはじめる。


「……こういう言い方も変だけど、航はたぶん、綺麗な部分の震災しか見てこなかったんだと思う。例えば、炊き出しを並んで待つ人とか、協力し合って避難所の運営をしているとか、もっとほかに欲しい人だっているのに、自分だけ子どものお菓子を買ってしまって心苦しいとか、美談みたいに取り上げられるニュースが、今の被災地だと思ってきただろ?」

「そうじゃ、ないのか……?」

「ないね。俺はずっとここにいたから知ってるけど、沿岸部でも、内陸に行けば行くほど、同じ被災者なのかって思うくらい、全然違った。子どもって正直だよな、避難所は遊び場だ。ゲームしたり、走り回ったり。親もそれを止めない。なんなんだよ、って思ったよ、正直」

「……、……」

「津波の被害にあった銀行からは金が盗まれていたり、避難していて無人になった家からも、何か盗まれていたり、みたいな、な」