その言葉は、衝撃、というか、戦慄だった。
震災を知らなさすぎる、と言われたことについては、それなりに異論もあることにはある。
俺だって、家々を飲み込みながらを逆流してくる黒い波をこの目で見たし、明かりひとつない真っ暗闇の中を眠れずに過ごした、仲間たちを探して避難所もたくさん回ったのだ、と。
けれどそれは、秀斗が直接見聞きし、仲間たちの消息を調べ回ったことに比べれば「知らなさすぎる」とはっきり言葉に出して言うほど、俺は震災を知らなさすぎるということで、双方の意見の食い違いも、やはり、話せば分かる、というレベルを越えているのだろうと思う。
俺が街を離れ、母さんの実家に移ったあとも、秀斗は地元に残り続けていた。
決定的な違いは、そこだ。
秀斗は、確かに震災前とは人が違う。
再会した直後は、わずかな違和感だった。
けれど、仲間たちの最後を話している最中には情緒が不安定になる場面が多々あり、わずかだった違和感は、徐々に、秀斗……お前ってこんなにドライなやつじゃなかっただろ、と、変わり果ててしまった人格を目の当たりにしたのだ。
でも、変えてしまったのは俺かもしれない……。
「……何も知らないで、ごめん」

