「啓太も英慈と同じように自宅で被災したらしい。啓太の親は共働きだっただろ? だから、家には啓太ひとりだ。余裕で逃げられたはずだった。けど『じいさんとばあさんの様子を見に行くから、父さんたちは先に逃げてろ』と親にメールしたきり、いまだに連絡はないそうだ」
「それって……」
「祖父母の家に向かう途中か、祖父母を避難させようとしている途中か、そこら辺は、もう分からないけど、死んだ確率は高いだろうな」
「……」
秀斗の口振りは、大親友の啓太の訃報を語るときですら、変わらず淡々としていて、話の内容から察するに、啓太や、啓太の祖父母はまだ見つかっていないものと思われる。
……津波で流されてしまったのだろう。
何もかも。
「啓太の親父さんやお袋さんとも、縁あって別の避難所で会えた。一緒に家の跡地まで行って啓太や祖父母を探したんだけど、ほんっとに何もかも流されてて、啓太たちはもちろん、バッシュとかユニホームとか、写真とか、そういう遺留品になるようなものは全然なかった」
「……そうか」
「最後に言われたよ、お袋さんに。『啓太と親友でいてくれてありがとう。でも、あなたの顔を見ると、どうしてあなたじゃなくて啓太が……って思ってしまう。だから、もう顔を見せないほうがお互いのためだと思う』って」

