その顔に、もしかして秀斗は、健司の遺体の確認をしたのだろうか……と、そんな考えが頭をよぎり、同時に、軽はずみなことを言ってしまったのだと後悔の念が押し寄せてきた。
もしも俺の想像通りだとしたら、何も見ていない俺の言葉などは、あからさまに優等生じみて聞こえたに違いなく、それを受けた秀斗が何一つ気に入らないのは至極当たり前だ。
しかし秀斗は、こう続ける。
「 まあ、いいさ。健司と、同じ船から見つかった親父さんの遺体を確認したのは、中学生の妹だ。健司の家はお袋さんがいなかったから、遺留品の確認も全部妹がしたし、俺はただ、それにつき合っただけ。何かの縁があったんだろうな、妹とは避難所でばったり会ったんだ」
「妹……が」
「そうだ。震災孤児とかいうやつになったよ。まだ13歳なのに、辛い経験ばっかりして。それでも妹は、健司と親父さんが早いうちに見つかってよかった、区切りがつけられる、って言うんだよ。妹にとっては、見つからないほうが最悪だったってことなんだろうな」
「そうか」
人それぞれに考え方があり、見つかったほうがよかったとも、見つからないほうがよかったとも、俺にはどうこう言う権利も資格もない。
ただ、秀斗が言ったように、健司の妹にとっては、見つかったほうがよかったのだろう。

