“物分かりがいいふりをして全部諦めている"。

それを、こんなにもはっきりと指摘され、その通りだと認めることしかできない自分が、何よりも悔しくてたまらなかったのだ。


「あっ……」


事の重大さに気づいて、体中をしびれるような感覚が走り、今さらながらに足が震える。

お客さんに手を上げるだなんていうことは、何があっても絶対にしてはいけない。

こればかりは許してもらえない、今すぐにでも汐凪から出ていってしまうだろう。


「なんだよ、あんたもそういうの持ってんじゃん。ま、今の命の使い方は、まあまあ無駄じゃなかったんじゃないか?」

「……、……え?」


けれど、間宮さんはニヤリと口の端を上げるとそう言い、背中を向けてまた歩き出した。

今度こそ1人になったあたしは、ジンジン痛い右手を胸の前で握りしめながら、次第に小さくなっていく間宮さんの姿を見送るだけ。


よく分からない人……それが今日、あたしの中に新しく加わった間宮さんの印象だ。

叩かれたのに褒めるだなんて、インテリっぽいのにバックパッカーのような格好もさることながら、やっぱり風変わりな人だと思う。

でも……。