「まあ、とにかくだ」
ハンドルを右に切りながら、親父は言う。
道を曲がると、新幹線の駅舎は正面だった。
そのため、どうやら親父は、エールと称するこの話を締めくくりにかかったらしい。
「航が思ったように進んだらいい。母さんは、頑張れ、なんて言ったかもしれないが、本心では父さんと同じ気持ちなはずだ。行く先に立って矛盾していてすまない。父さんから言ってやれることは、それくらいだ。……駅が近いな。そろそろ、降りる準備をしなさい」
「ああ。いろいろ……サンキュ」
「ん」
駅のロータリーに車を停めるまで、それきり、親父との会話はなかった。
荷物を下ろすのを手伝ってくれた親父は「見送るのは、どうも性に合わない」と言いだし、すぐに運転席に戻り、なんだかんだで寂しいんだろう、そんなふうに、俺は受け止める。
「……じゃあ、行ってくる」
「気をつけて」
運転席の窓越しに最後のあいさつを交わすと、親父はひとつ小さく頷き、車を走らせてロータリーを出て行き、俺はそれを見送ると、スーツケースとともに駅舎のほうに歩いていった。
親父のほうは振り向くまい、と決めて。
……ああ、涙が出そうだ。

