今の出来事が全部夢だったらいいのにと、どんなに強く思っただろう……。

けれど、とめどなく溢れてくる涙や胸の痛みがこれは夢ではないのだと痛感させる。


ハルに彼女ができたことや、それでもまだ想いを残したままでいること、どうして間宮さんに知られてしまったのかは分からない。

もしかしたら、昨日、談話スペースのテーブルに置いたままにしてしまった課題のノートに挟んでいた手紙を偶然見たのかもしれないし、あるいは、ハルとあたしの短いやり取りの間に何か感じるものがあったのかもしれない。

でも……っ。


「ちょっと待ってくださいっ!」

「あ?」

「なんで他人の間宮さんにそこまで言われる必要があるんですか!偉そうなことばっかり言って、バカにしないでくださいっ!」


ーーバチーン!

気がつけば、あたしは間宮さんの振り向きざまの左頬に、思いっきり平手打ちをしていた。


ただただ、悔しかったのだ。

あたしが大切にしてきたものを根こそぎ否定されたような気がして、親友の明梨にさえ、ついこの間まで言えずにいた恋心を鼻で笑われて。

……ううん、違う。

本当はあたしだって、誰に言われなくても、自分が一番よく分かっていた。