「父さんたちも、まだ悩んでいるんだ。まだまだ復興の兆しも見えない中で、自分たちだけ、ここを捨てるように出ていってもいいものなのか、と。でも、航が毎日、友だちの行方を探し回る姿がかわいそうでな……。もう見ていられないという気持ちも、本心なんだよ」
「お母さんも、同じ気持ちよ」
「……、……」
放心しきっている俺に、2人は言う。
俺だって、小さな子どもじゃないし、反抗期まっただ中というわけでもなく、今のこの状況下においては、子どもだろうが反抗期だろうが、家族がひとつとなり、自分たちが最善だと思う答えをどうにか出さなければならないことくらい、痛いくらいに理解している。
理解しているが……。
2人の気持ちを汲んではあげたいが、それと同じように怒りもこみ上げてきて、どうしても、ふざけるな、という気持ちが今は大きい。
かわいそうで見ていられない、って、そんなのは俺のほかにも大勢いて、悩みに悩んで遺体安置所を回りはじめた人たちだっているんだ。
俺だけが、そういう境遇じゃない。
と。
「……ひとつ、聞かせてほしい。俺だけここに残りたいって言ったら、2人はどうする?」
「……」
「……」

