かけぬける青空は、きっと君とつながっている

 
「まあ、大きな地震だったし、津波から逃げるので精一杯の中じゃ、携帯なんて持って逃げる頭なんて働かないのが普通だよ」と補足して言い、微笑む彼から、学ぶことは多い。

もう少し気持ちを楽に持つこととか、いい方向に考えることとか、無事だと信じることとか。


ここへ来てから、仲間たちや、一緒に避難している人たちのこと、家や建物の中に取り残されているかもしれない人たちや、人命を守ることを最優先に避難を呼びかけていた人たちのことなど、そういった多くの人のことばかりを延々と考えていたけれど、ほんの少しだけ、肩の力を抜いてもいいかもしれない、そう感じる。

もしかしたら、一時の気休め程度にしか、ならないかもしれないけれど、それでも、彼の明るく前向きな考え方に俺は救われ、この闇夜が明けるのを、今か今かと気を揉みながら待つ焦りからは、だいぶ解放されたように思う。


「突然、悪かったね。早くご家族と連絡を取るといいよ。君のことを心配しているだろうし、友だちだって、君が心配しているように、君のことを心配しているはずだから」

「そうですね。ありがとうございます」


立ち上がると、彼は「ちょっと車で休むよ」と言ってその場を離れていき、俺はさっそく、両親と仲間たちに『無事だ』とメールを打った。