かけぬける青空は、きっと君とつながっている

 
「……、……っ」


言葉が出なかった。

昨日まで確かにあった街が……ない。

その様子は、異様としか言いようがなく、どこをどう見渡しても、一面が暗闇、というのは、ほかには何も表現のしようがなかった。

また、辺りはやけに静かで、それが逆に薄気味悪さも感じさせ、街の方向を見たまま、しばらくの間、立ち尽くしてしまう。


呆然としてしまうのは当然だろう。

そこには何もないのだから。

……いや、厳密に言えばあるのだ。

けれど俺の目には、家や建物の影もなく、今、俺が立っている道路の少し先は道もないように見え、まるで、街ごと津波に飲み込まれてしまったかのような錯覚に陥ってしまう。


あれからラジオは聞いていないものの、そのとき少しだけ聞いた報道と、目の前の状況を頭の中で整理していけば、地震や津波の規模は相当に凄まじいものだったと簡単に想像できる。

尋常ではなかった、あの揺れ。

川をさかのぼってくる黒い津波。

次から次へと集会所に避難してくる、人、人。


1日、2日で、この状況がどうにかなったら、そっちのほうがどうかしている、そう思う。

それくらいの地震と津波だったのだ。