あたしはそれを、これといって命に関わるようなことでもないと思ったし、間宮さんも、あたしの意識が戻ってからも、民宿までの帰り道でも、特に変わった様子はなく、世話が焼ける、程度にしか思っていないと思っていた。
けれど、間宮さんの本心はこれだったのだ。
このままあたしの目が覚めないのではないかと気を揉み、1人になったとき、やっと、生きていてよかった、と張り詰めていた気持ちの糸を解き、本心をぽつりぽつりと語る。
……そのことの全てが、大事な人を亡くしてしまったからである、と容易に想像させ、だからあたしは、なんてことをしてしまったのだ、と、自分の愚かさを痛感することになったのだ。
「バカだ、本当に。……バーカ」
間宮さんの「バーカ」を聞くたび、胸が締めつけられそうに痛く、今にもドアを開け、その背中に寄り添いたい衝動に駆られる。
でも、気持ちのままに動いたところで、あたしに一体、何ができるというのだろう……。
何をしても状況が好転することはないような気がし、また、そっとしておくほか、今のあたしに残された選択肢はないような気がして、静かに『潮風の間』のドアを閉めると、あたしは、すごすごと自分の部屋へ逃げ帰った。

