ハルのことだ、絶対にこのまま香ちゃんと別れるようなことはしないだろうし、香ちゃんだって、別れる選択肢は考えていないに違いない。
ハルが香ちゃんのお母さんから許しを得るまでには、長い時間がかかるかもしれないし、駆け落ちによって、ゼロどころかマイナスからのスタートになってしまったかもしれない。
けれど、ハルの短い言葉からは、これから関係を修復していこう、信頼を得よう、そういう強い意志と覚悟が感じられて、ハルの香ちゃんに対する本気度を再確認できたあたしだった。
「貸しは倍にして返せよ」
ふっと表情を緩め、冗談半分な調子でそう言った間宮さんに対して、ハルも同じように「10倍にして返すよ」と返事をし、改めて頭を下げるハルの両親とともに、深々と頭を下げる。
あたしたちもまた、一礼し、その場を去った。
今夜、ハルたち家族は何を話すだろう。
難しいかもしれないけれど、香ちゃんは、お母さんに話を聞いてもらえるだろうか。
3人に見送られ、民宿へと戻る道すがら、あたしは漠然とそう思い、お母さんやあたしの歩幅に合わせて、ゆっくりとしたペースで先頭を歩いている間宮さんの背中をそっと見上げた。

