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香ちゃん親子が帰り、そのが姿が見えなくなるまで頭を下げ続けていたハルと、ご両親も頭を上げると、その場は一気に静寂に包まれた。
初秋の夜風は、薄手の長袖を羽織っていないと寒いくらいなのに、今夜はやけに蒸し暑く、あたしたち6人の静寂の間を縫うようにして鳴く秋の虫たちの声もまた、いつも以上に活発だ。
それを煩わしく思うのはあたしだけだろうか。
しばらくの間、誰も何も言葉を発さない空間がとても重苦しく、息が詰まりそうだ。
「帰るぞ、菜月」
「……え、あ、はいっ」
そんな中、先に声を発したのは間宮さんで、一瞬、間をおいて返事をしたあたしは、ハルたち親子3人に軽く頭を下げて歩きはじめた間宮さんに続いて、頭を下げ、あとに続く。
お母さんは、その後ろを何も言わずについてきて、やがて駅前のロータリーを抜ける。
と……。
「菜月、間宮さん、ありがとう……っ」
ハルの声が背中から追いかけてきて、あたしたちは少し立ち止まり、振り返った。
暗いため、ハルの表情までは分からないのだけれど、声の調子からは、何かが吹っ切れたような明るさも垣間見え、なんとなくほっとする。

