香ちゃんのお母さんのような姿も大人の姿だと間宮さんは言い、それはあたしも、少なからずそうだと思うところはあったりもする。
例を挙げれば、少し前のあたしのお母さんだ。
あたしを家に連れ戻そうと、突然、民宿にやってきたときのお母さんは、反発を許さない感じが、今の香ちゃんのお母さんに似ていた。
けれど、今はどうだろう。
あたしの右隣で静かに状況を窺っているお母さんは、駅舎を出てきたあたしの顔を見ると「ご飯、用意してあるわよ」と、優しく笑った。
人は、変われる。
……と、思いたい。
きれいごとかもしれないし、あたしのお母さんが変わったように、香ちゃんのお母さんも変わるとは限らないかもしれない。
それぞれに事情を抱え、様々なしがらみの中を精一杯、気を張りながら生きていて、それはきっと、大人ならなおさらのことだと思う。
大人の事情に口を出すな、と言われれば、それまでだけれど、子どもは子どもなりに親のことを考え、想っていることだけは、どうか伝わってほしい……そう願わずにはいられない。
目を開け、耳をふさいでいた手を下ろす。
じっと見据える先には、香ちゃん親子の姿。

