それでも、怒る気持ちも分からなくもないけれど、少しくらい、おかえり、と香ちゃんを抱きしめてあげることはできないのだろうか。

それとも、そう思うこと事態、あたしはまだまだ子どもだ、ということなのだろうか。

どうにか少しだけでも状況が好転する手だてはないだろうか、と考えるけれど、何も思い浮かばない自分が情けなく、もどかしい。


「帰るわよ、香」


すると、香ちゃんのお母さんはそう言い、香ちゃんの腕を無理やり引いて歩きはじめ、あたしは思わず、声を出しそうになる。

せめて、駆け落ちをした理由だけでも2人の口から聞いてはあげられないだろうか、という思いからのことだったのだけれど、あたしのその行動にいち早く気づいた間宮さんに、すっと右腕を出され、止められてしまった。


「やめておけ」

「でも……っ」

「ハルからも言われてるだろ、お前がとばっちりを受けるだけだ。そうなったら、ハルがもっと傷つく。ああいうのも大人の姿だ。見たくなかったら目をつぶって耳をふさげ」

「……っ」


なんてあたしは無力なんだろう。

言い返せず、間宮さんに言われたままに固く目をつぶり、耳をふさぐあたしは、とても弱い。