バカにも程がある、というもので、少し考えれば、泊まるには身分の証明が必要なことくらいすぐに思いつけそうなものなのだけれど、気が動転していた、ではいよいよ済まされない状況に、時間のロスが悔やまれてならない。
街灯はもうとっくに点いていて、道路を行き来する車のヘッドライトが、やけに眩しい。
この中を2人はどんな気持ちで歩いているのだろう、と思うと、心臓がつままれる思いだ。
「うう……」
泣くなあたし、そう何度、自分に言い聞かせても、どうしようもなく視界がぼやけてきてしまって、無言のままあたしの隣に立っている間宮さんに、どうしても顔が向けられなかった。
すると、ふわり、頭の上に手が乗る。
「……悪い、菜月。俺がもっと早く気づけばよかったな。とにかくだ、涙が出るのは腹が減ってるからだ。コンビニ行くぞ。食いたくなくても食え。こうなったらもう、全力で探すのみなんだ、お前が途中で倒れたらどうする」
そして、そう言い終わるやいなや、間宮さんは頷くこともままならないあたしの手をぎゅっと握りしめ、コンビニに進路を取りはじめた。
手を引かれるままにコンビニの自動ドアをくぐったあたしは、適当に商品を手に取り、お会計をする間宮さんをぼんやりと見つめるだけだ。

