今さら気持ちを伝えたところで、それはただの自己満足でしかないし、ハルだって、このタイミングでの告白は迷惑に思うだけ。
……それ以前に、告白する勇気なんてあたしにあるわけがないのだけれど。
会話が弾んでいるのはあたしが故意にそうしているのであって、ただの強がりだった。
本当はまだ全然諦めきれていなくて、それでもハルの顔を見ただけでどうしようもなく嬉しい気持ちになるのは、抗えない。
そんな複雑な心内を悟られないように気持ちを切り替え、あたしもハルの背中に続いた。
客室が並ぶ2階は、昨日から泊まっている『潮風の間』の間宮さんと、ほかに2組だった。
夏の繁盛期に、全部で8部屋ある客室のうちの半分も埋まっていないというのは、現実的に考えて、かなり厳しいのかもしれない。
「昔はいつでも満室だったのに、なんだか寂しいよなぁ……。みんな汐凪の良さが分かってねぇんだよ。ああ、ちくしょー」
「ありがとね、ハル。でも仕方ないかなって思うところもあるの。潮風の間のお客さん以外は昔からの常連さんだし、きっと、そういうものなんだと思うんだ、あたし」
「いや、でもさ」
「うん。分かってるよ、ありがとう」

