かけぬける青空は、きっと君とつながっている

 
こうしてあたしたちは、一路、動物園を目指すことになったのだけれど、電車に揺られはじめてしばらくした頃、ふとあることに気づいて、窓の外の景色を眺める間宮さんに聞いた。


「間宮さん、香ちゃんが動物園に行きたいって言っていたのを思い出したとき、確か“でかしたぞ、菜月”って言いましたよ……ね?」

「は? 言うか、そんなもん」

「えー、そうでしょうか」


名前を呼ばれたのは、前に数回あったけれど、棒読みだったり、お母さんの前だったりと、けっこう仕方なく言っているように思っていた。

けれど、さっきの「菜月」は、とっさに出た、というか、本心から言ったように思えて、間宮さんに名前を呼ばれるのは、なかなか嬉しいものだ、と、心の真ん中がほんのり温かい。


「お前なんて、“お前”で十分だし」

「またそんなことを言う」

「そんなことより、動物園にいなかったら、次はどこに行きそうかを考えろ。アホめ」

「分かってますよ、もー」


間宮さんはあからさまに嫌な顔をし、すぐにまた窓の外の景色を眺めはじめたけれど、なんとなく感じるのは、意図せずあたしの名前を口にしてしまって、しまった、という思いだ。