こんなときだけれど、痛感する。
幼なじみといっても、あたしはハルのことを何も知らないんだ、香ちゃんと友だちでいも、駆け落ちをするくらい思いつめていたことに気づいてさえあげられなかったんだ、と。
にわか幼なじみ、にわか友だち……。
あたしは一体、2人の何をもって、“幼なじみ”や“友だち”だと思ってきたのだろう、とたんに自分が情けなくなり、思わず涙がこみ上げる。
「泣くな、うっとうしい」
すると、間宮さんに即座に言い捨てられる。
それもそのはずで、泣くのは、何も今じゃなくてもできるのだから、勝手に落ち込むよりも、まずは集中して頭を働かせよう。
「……泣いてませんよ」
「あっそ」
心ばかりの強がりを言い、緩くなった涙腺をきゅっと締め直すと、あたしは、この駅の近くにはどんな施設があっただろうか、と、時刻表を眺め、おぼろげな記憶の糸をたぐり寄せる。
間宮さんは旅行者で、頼りないながらも頼るしかないのは、あたしの記憶だけなのだ。
しっかりしよう、あたし。
「……例えば、なんだけど。どこか行きたいところがあるとか、やりたいことがあるとか、何か言ってなかったか? 水族館に行きたいでもいいし、海水浴をしたいでもいい。内陸のほうにデートに行くでも、遊園地に行くでも、なんでもいいから、とにかく思い出せ」

