かけぬける青空は、きっと君とつながっている

 
「そうそう、赤い満月って、何か災害が起きる前兆だ、という迷信もあるみたいです。科学的な根拠はないんですけど、やっぱり、見かたによっては不気味だったりしますからね」

「……ほー」

「あ、でも、桃月とか、ストロベリームーンとか、ローズムーンっていう可愛らしい呼び名もあるみたいなので、そういう方向で考えると、とりわけ怖くもないかと思います」

「……わー、ロマンチックー」

「どっちにしても、あたしは大好きですよ!」

「……、……」


間宮さんの歩幅に合わせて歩いているため、顔を上げて話す余裕はなかなかなく、少し不自然に間を空けて返事をする間宮さんの表情をうかがうところまでは、気が回らない。

それでも、月に関する本を読んでいたことと、いよいよ明日に迫った満月を一緒に見に行ける高揚感が重なり、あたしは、弾む息の合間に長台詞を言う口を止められなかった。

月の話もおおかた尽き、民宿が見えはじめたときになって、やっと間宮さんが疲れた顔、というか、浮かない顔をしていることに気づいたくらいで、けれど、それについて間宮さんは「久しぶりに頭を使って疲れただけだ」と言う。


「めし、できたら呼んで」

「……あ、はい」