すると間宮さんは、複雑な気持ちでいるあたしの横でそう言いながら腕をさする。
「見ろよ、寒イボ立ってるし」
「……えっ、う、うわ、気持ちわるっ」
そして盛大に浮き出た鳥肌を目の前にずいっと出してくるものだから、あたしは思わず、鳥肌を見て感じたままを口にしてしまった。
かく言うあたしも、このあまりに偶然すぎる出会いか、間宮さんの鳥肌に助長されてか、みるみるうちに全身の毛という毛が逆立っていくのを止められず、腕をつかむ。
民宿にはクーラーもないから暑いはずなのに、あたしの体の周りだけ、冷凍室に入ったみたいにひんやりとした感覚が覆った。
偶然って恐ろしい……。
「お前だってすげーだろうが。自分だけ棚に上げて、気持ちわるっとか言ってんじゃねーよ」
「そ、そうでした……」
引きつった苦笑いを浮かべると、もっともなツッコミを入れた間宮さんも、台詞とは対照的に苦笑いを浮かべている。
けれど、それもほんのわずかな間だけで、すっと真顔に戻った間宮さんは言う。
「“偶然“って言葉で片づけらんないこともあるけど、ここに来られたことは、たぶん俺の中で特別な偶然なんだと思う。久しぶりなんだ、ここんとこ、けっこう寝れてる」

