黙々と書類にサインを記し、丁寧な口調で見つめられた。

「この俺と生徒会主催の仮面舞踏会(マスカレード・パーティー)に一緒に出てくれませんか?
プリンセス・ムーン」

はい?え?
仮面舞踏会(マスカレード・パーティー)?

「誰を、誘ってるの?
まさか……でも」

聞き違いなのかな?
ムーン……って言ってたような。
気のせい。気のせい。自分に言い聞かせながら笑い飛ばす。

「君だよ。
断るなんてこといわないよな」

笑顔で答えた。

「ええぇ!?
やっぱり私なの?
無理ですよ」

一緒に参加できたらどんなに楽しいだろう。
一緒にダンスが踊れたらどんなに嬉しいだろう。
……でも、華やかな場は似合わない。
差し出している掌に手を重ねれば……参加してみたいと思っていた仮面舞踏会(マスカレード・パーティー)に参加できる。

「どうしてだ」

「それは……私には似合わないから……。
先輩に声をかけられ、助けてくれたことにはとても感謝してます。
でも、相手は私じゃなくてもいいと思います。先輩に声をかけられ断る人はいませんよ。
きっと」

教室から出て行こうとするとまだ抱きしめられた。

「君がいいんだ。
君は……俺は君の……」