その指に触れて

「……え? 何、知ってんの?」


かなり予想外の反応なんだけど。


予想外過ぎて、クリームデニッシュの袋開けちゃったし。あ、関係ないか。


「山田遥斗って、四組の人でしょ?」

「……クラス聞いてなかった」


うわ、すげー失態。


一番聞きやすいことをなぜあたしは今まで聞かなかったのか。


「有名よね、山田遥斗って」

「どんなんで?」


あたしがクリームデニッシュにかぶりついても三人は何の反応も示さない。


「学年で一番頭いいのよ、あの人」

「うっそお!?」


あたしは思わず口からデニッシュの欠片を出してしまった。


「万梨子、汚い」

「……すみません」


欠片をティッシュで拭き取る。


恥ずかしい。


「そうなんだ。遥斗、頭いいんだ……」

「万梨子、遥斗って呼んでるの?」

「けっこう親しいじゃない」

「もしかして、キス以上もしちゃったとか?」


最後の瞳の言葉にうぐ………と言葉を詰まらせる。


汐香と睦実はいいとして、キスは……。


首筋にはされたけど、あれってキスに入る?


しかもあの日の出来事はほぼ事故だしね。お互い様ってことで終わらせたことだしね。


あたし達は付き合ってなどいない。


よく言えば親しい友達、悪く言えばあたしがほぼストーカー状態。