その指に触れて

でもまあ、鈍い方が長くいられるかもなと、自分を慰めた。


その次の日。


あたしは捕まってしまった。


教室で仲良しの三人に。


「最近万梨子の様子がおかしいと思ったのよ」


ぽかんとしているあたしを汐香が睨みつける。


「私達が気付かないとでも思った?」

「最低。友達だと思っていたのに」


瞳と睦実にも睨まれる。


遥斗のことだとすぐにわかった。


いや、隠していたわけではない。三人には元カレのことも話しているし、三人のことは信頼している。


ただね、すっかり忘れてたんだよね。


三人といる時に遥斗のことを考えることがなかったんだよね。


遥斗のことがあまり好きではないとか、そんなことではなくて。


……まあ、言ったところで一回は反対されるだろうなと思ってたし。なんせ見た目から草食だから。


なんで好きになったのかという理由を話すこともめんどくさいし。


「その様子だと、けっこううまくいってるようね」


この中で一番恋愛経験が豊富な汐香が目の前にパンの袋を置いた。


「あ、これ、購買で一番高いクリームデニッシュ」

「さあ、白状しなさい。全部話したらあげるわ」

「いや、隠してたつもりないし……」


結果的に隠していたことになっていただけで。


ていうか、カツ丼ないからクリームデニッシュって……。