その指に触れて

ゴミ箱の前で遥斗に見つからないようにこっそりジュースの残りを啜ってから美術室に戻ってくると、遥斗は既に三つ目のパンに手を伸ばしていた。


「やっぱり腹減ってたんじゃん」

「食べ始めたら止まんなくなって」

「絵と同じね。なんでそんな急いで仕上げたの? 締め切りまでまだ半月もあるじゃん」

「別に急いだわけじゃなくて、始めたら止まんなくなっただけ。そんでいつの間にか終わってた。俺、すごいときは五日くらい部屋に篭って描いてた時もあるから」

「そんときはどうしたの?」

「親に必死に止められて無理やり飯食わされた」

「だろうね」

「集中してると空腹ってのも忘れるんだよ。まだ生きてるからいっかみたいな」

「いいわけないでしょ。ここで死んだら、アホな死に方をした高校生ってことで全国で報道されるわよ」

「それもやだ……」

「もし昨日仕上がんなかったら、今日も部屋に篭ってた?」

「たぶんね」


口の端についたクリームを舌で舐めとる遥斗を見て、こいつはほんとのアホだと思った。