その指に触れて

それからあたしは放課後は毎日美術室に通い詰めた。


遥斗が絵の具を塗っていくのを後ろから見つめるだけの日もあれば、窓の外にいる好きな人を眺める役のポーズも時々した。


あたしが今見つめたいのは窓の外じゃなくてすぐそばにいるんだけど、なんて毎回思いながら。


そこに描かれているのが自分だという事実を除けば、白黒の世界がだんだん色付いていくのは見ていて楽しかった。


小テストの前日なんかは、遥斗の後ろで勉強もした。


「勉強あるなら家に帰ってよかったのに」と苦笑されたけど、「遥斗がいるから集中できるの」と言ってやった。


事実、遥斗の集中力は凄かった。


本当に集中している時は三、四時間はずっとキャンバスに向かっている。


長い長い授業を終えて、それだけでも疲れているはずなのに。


それでも絵を描くことが嫌だという言葉が遥斗の口から漏れたことはない。


絵を描くことが本当に好きな人なんだなって思った。


そうじゃなきゃ、こんな地道な作業を続けられるわけがない。