「色気作戦はだめか」

「高校生向けのコンクールだから、審査の対象外だと思うよ……」

「うーん、じゃあ自分を描くってのは?」

「自分?」

「鏡に写ってる自分を描くの。なかなか斬新じゃない?」

「やだ。俺は万梨ちゃんを描きたいの」


不覚にも恥ずかしくなった。


うわ。なんか告白された気分。


実際、絶対違うけど。


「……まあ、そうじゃなきゃ、あたしがいる意味ないか」


平然と言ったつもりだったけど、あたしはドキドキしていた。


こんなことくらいで動揺するなんて……。


「うん。俺じゃなくて万梨ちゃんがメインなんだから」

「そうだねえ……」


あたしは教室の中を見回した。


絵の具、パレット、オブジェ、机、椅子、美術室独特の匂い。


「あ」


そうだ。


色気って、肌を見せるだけじゃないじゃん。