その指に触れて

「山田くんはさ」

「うん」

「ゆみちゃんをここに呼び出して何する気だったの?」

「ん? 今日はゆみちゃんが帰ってくるからタルトを作ってもらおうと思ってさ」


へらへらと笑う目の前の男に、呆れる気力すら萎えてしまう。


「……一個一個聞いていきます」

「ん?」

「ゆみちゃんとは別居してんの?」

「うん。ゆみちゃんは東京の大学に行ってて、一人暮らししてる。たまに帰ってくるから、お菓子作ってもらうんだ」

「なんでメールで言わないの?」

「ゆみちゃんにメール送れないことはわかってたんだよね。万梨ちゃんに送っちゃった日、ゆみちゃんからお怒りの電話がきてさ」

「普通電話で済ませるよな、そういうの」


なんでわざわざ学校に呼び出すんだ、自分の姉貴を。


「ここ、ゆみちゃんの母校だし」

「ああ、なるほど……って、そうじゃないよね。じゃあ、ゆみちゃんではない人に送られてるってことはわかってたんだよね。あたしを嵌めたってこと?」


こいつ、見かけによらず腹黒いとか?