その指に触れて

「なるほど、そういうことか。うん、わかったわかった」


十分後、男はようやく顔を縦に振った。


「はあ。人に説明するのがここまでめんどくさいとは」


一通りメールのいきさつをやっとのことで説明し終えたあたしは、再び椅子に座って足を組んでため息を吐いた。


こいつ、あたしの説明でなかなか理解しないんだもん。


この学校でこんなに頭の悪い奴がいるとは思わなかった。


「ていうかあんた、本当にここの生徒?」

「そうだよ。失礼だな、山田遥斗っていう立派な名前があるんだよ」

「山田遥斗?」


ん? と思った。


その名前、どっかで聞いたことがあるような……。


「君は?」

「あたし? 西崎万梨子」

「万梨ちゃんか。よろしくね」


にこっと笑うそいつは、優男の典型的みたいな男だと思った。


「初対面なのに慣れ慣れしいね」


嫌いじゃないけどさ、慣れ慣れしい奴。