その指に触れて

美術室は四階の一番端っこにある。


大抵の人は美術より音楽の授業を受けるから、普通の人が出入りすることはまずないけど、場所くらいは知っている。


そういえば、今まで美術部って人とも会ったことがない。


運動不足の足を必死に動かして一気に四階まで駆け上がり、日が当たらない校舎の端っこまで来た。


美術室の扉は閉まっていて、校舎の端っこであるだけに雰囲気がなんだか暗かった。


吹奏楽部はいつも楽器を演奏しているから、そばにいるとうるさいくらいだけど、美術部はやっぱり静かなのか。


ていうか、今日活動してるのか?


送り主だって、ここにいるとは限らないわけだし。


むしろ、ここにいない可能性の方が高いのだ。


……だめだ。思考が暗い。


意を決して、あたしは「美術室」と書かれている扉に手をかけた。


扉は苦も無くガラガラと音を立てて開いた。


うちの高校の美術室や音楽室などの特別教室は、二重の扉になっている。


つまり、もう一つ扉を開けなければ教室には入れない。


あたしはもう一つの扉を開けた。