その指に触れて

高校までは自転車で20分。


自転車を漕ぐと、夕方になりかけた涼しい風があたしの首筋を撫でる。


ちょっとだけ涼しい。


でも、と自転車を漕ぎながらいろんな思考を巡らせた。


もしかしたら、送り主は遠い地域の人かもしれない。


一高という名前に飛びついて考えなしに家を飛び出したけど、全国には一高という愛称の高校などいくらでもあるだろう。


あたしが思う一高と、送り主が思う一高が全く違う高校ということも十分にありうるのだ。


あたしはいつもこうだ。考えるより先に体が先に動いてしまう。


めんどくさがり屋にも関わらず、あたしの体はめんどくさいことが大好物らしい。


自転車を漕いでしまっている手前、もう戻りたくないけど。


家からどうしても出たかったのだ。今更あーだこーだ言っても仕方ない。


学校に着いて、携帯の時刻を見る。


四時前。


一時間くらい早いけど、送り主はもう美術室にいるだろうか。