その指に触れて

「万梨ちゃん、顔上げて」


遥斗に言われてわずかに頭を向けると、遥斗の手があたしの頬に触れた。


やっぱりびくりと震えたけど、遥斗はあたしの頬に触れたまま微笑んでいた。


「嫌いになるわけないでしょ。俺、もともと嫌いになって万梨ちゃんから離れたんじゃないんだから」

「何それ……」

「情けないけど……」


「俺、嫉妬してたんだよね」と遥斗は自嘲気味に笑った。


「誰に?」

「晃彦に」

「仲良くなったのは、離れた後でしょ?」

「その前からだよ」

「……よくわかんない」

「なんで、そんなに簡単に万梨ちゃんを抱けるのって」

「……つまり?」

「俺も欲情してたってことかな」


万梨ちゃんのこと言えないよねと言われたら、ほんとだよと頷くしかない。


「情けないよね、俺も」

「や、だからって……」

「離れたのは受験のためと、もう一つ理由があった」

「え?」

「あれ以上一緒にいたら俺、無理やりにでも万梨ちゃんを襲いそうだったから」

「……それってさ」

「うん」

「かなりあたしのこと好きだよね」


遥斗はあたしの頭を軽くどついて「自分で言うな」と笑った。