その指に触れて

「遥斗、違うの」

「え?」

「遥斗が怖いとか、そんなんじゃないの」

「ん……」

「違うから、絶対違うから!」


あたしは遥斗を見れなくなって、俯きながら口を開いた。


違う。絶対違う。


遥斗じゃない。


じゃあ、あたしは、何に怯えているのか。


触れられることか、荒々しいキスか。それとも、セックスか。


いずれにせよ、あたしの体が悲鳴を上げているのは確かで。


何かを怖がっていることは事実だ。


なんでこんな時に。


……晃彦のこと?


あたしが最後に抱かれたのは、倉庫。いまだにあれは何と言うプレイだかわけがわからないやつだったけど、少なくともあたしにセックスに対する恐怖心を植え付けるには十分な出来事で。


遥斗に抱かれたいのに、怖い。


自分の腕を抱きながら「嫌いにならないで……」と弱々しい声が漏れた。


ほんと、情けない。