その指に触れて

太陽の熱が窓から容赦なく降り注ぐ極力入りたくない自室に入り、ブラウスとスカートと紺のハイソックスを引き出しから取り出すと着替え始めた。


とにかく理由が欲しかった。


夏でもだらけるのが嫌だった。だから、何か理由をつけて出かけたかった。


今までメールのことなどすっかり忘れていた。最後のメールは既に一ヵ月も前の話だったのだ。


『私はゆみちゃんではありません。間違っていますよ』


そんなメールを送ればいいだけの話だ。一ヵ月前までのあたしだったらそうしただろう。


でも、動きたかった。運動はしなくとも、少しでもこの暑さを紛らわせたかった。


着替えるそばから、汗が全身から吹き出す。


顔の汗を大きめのタオルでふき取り、スカートのチャックを閉める。


汗でべとべとの足にハイソックスを履かせるのは夏の嫌いな所ベスト10に入るけど、とりあえず気にしない。


鞄にタオルと携帯を入れて、玄関でローファーをひっかけて、あたしは外に飛び出した。