その指に触れて

「俺がさ、ここで好きって言ったらどうなるわけ?」


その言葉と共に、遥斗の指があたしの腕に絡み付いた。


「……まさか。ありえない」


冷静に言葉を紡いだつもりだったけど、遥斗の指があたしに触れているだけでそこから熱があたしの体の奥に溜まっていく。


今はダメだって。


「俺のこと、まだ好きなの?」

「またそうやって焦らす。そうだよ、あたしは遥斗が好きだよ。だから遥斗の答えが」

「俺も、好きだけど」


それはかなり唐突だった。


唐突過ぎて、しばらくあたしの頭は思考をストップした。


「……は?」

「一度しか言わない」

「いやいやいや。おかしいでしょ。遥斗、そんないきなり言われてはいそうですかなんて言える? てかむしろ、ぐいぐいいく女は嫌いとかなんとか言ってなかった?」

「言ったね、確かに」

「わけわかんないんだけど。あたしにも中学生にもわかるように、家庭教師風に説明してくれる?」

「やだ」

「はあ?」


遥斗があたしの腕を引っ張る。ためらいがちに、でも力強く。


遥斗に引き寄せられたあたしは、もうわけがわからない。


遥斗が自分のメガネを外すのを、あたしは黙って見ていた。


「万梨ちゃんの体に教え込むから」


え?という言葉は、遥斗の唇によって口内に消えた。