その指に触れて

ティッシュで鼻をかみつつ、どさくさに紛れてメイクまで落とした。マスカラはしていないから黒い涙にはなっていないだろうけど、ファンデと口紅とアイラインが取れかけていたら、遥斗だって引くだろう。


どうせ高校生の時に散々すっぴんを見せているのだから、今更だ。


遥斗は目を伏せたままだった。ティッシュと共にメイク落としのシートを捨てる。


「……遥斗は、元カノのこと引きずってんの?」

「え……?」


遥斗が顔を上げたら、一瞬で笑われた。


「やっぱり、万梨ちゃんだ」


くくっといきなり笑いを漏らす意味がわからない。


「何、それ」

「メイク落とすとやっぱり変わらないなって」

「メイクすると変わる?」

「だいぶね。やっぱり万梨ちゃんだった」

「それ、褒め言葉?」

「だいぶ褒め言葉」


いったい何が面白くて、何に対して褒められてるのかさっぱりだけど。


「女の子のたまにすっぴん見せるのって、いいね。なんか許されてる感じする」


そんな、満面の笑みで言われてもこっちが照れるでしょ。