その指に触れて

「わかった、わかったから」


遥斗の指があたし目の下を動く。あたしの目から流れる涙が遥斗の指を濡らす。


「遥斗はっ、いいでしょ、好きな女とやれたんだから。好きな人に触れてもらえないあたしの気持ちなんかっ、わかってもらいたくもない」

「わかったから」

「しつこいでしょ。遥斗が変に優しくなかったらっ、あたしはとっくに諦めてた。変に優しくするからっ、勝手に期待して、勝手に落ち込んでっ、まだ好きでっ……」


ひっくとしゃくりあげながら、あたしは目の前のティッシュで必死に鼻をかむ。持ち主の許可は取っていないけど、この場合はもうどうでもいい。


ぶひーっと音を立てて鼻をかむあたしの目の前で、遥斗は目を伏せていた。


情けない。好きな人の前で泣きたくなかった。


今まで堪えてきたぶんのつけだろうか。


遥斗の前では泣きたくなかった。女は泣いたら許されると思われたくない。