その指に触れて

「……そうだよ、あたしは軽い女だよ」


不意に泣きたくなった。


二本目の缶チューハイの中身を飲み干し、わざと音を立ててテーブルに置いたら、あたしに背を向けて飲んでいた遥斗が振り向いた。


「あたしはね、そうだよ、好きじゃない男に軽々しく足を開く女だよ。でもさ、それがあんたのせいだってまだわかんない? あんたが誰と仲良くしようが勝手だけどね、遥斗、あんたが散々はぐらかしてきたのが悪かったんでしょうが。さっさと振られればあたしはあんな形で晃彦と関係なんか持たなかった。遥斗とあんな形でお別れすることもなかった。わかる? あんたがあたしをおかしくしたの」

「万梨ちゃん」

「遥斗がさっさと振らないから、あたしはまだ好きだって思ってんの。遥斗があたしをめちゃくちゃにした! 自分がどんなことしたか、わかってんの!?」

「万梨ちゃん!」


暴れそうなあたしの腕を遥斗が掴む。


あたしは泣き喚いた。


めちゃくちゃな論理だってことは頭の片隅でわかっている。


でも遥斗の一言で火がついたあたしは、口から出る言葉を止めることができない。


遥斗のせいにするなど、馬鹿げている。それもよく、わかっている。