「……よくもまあ、こんな明るいうちに外で言えるね」


「万梨ちゃん、痛いよ」と言いつつあたしの手から離れようとしない遥斗の手を穴が開くくらい見つめていた。


「あたしだって、恥ずかしいんだから」

「今まで俺に承諾なしに散々キスしてきたくせに」

「不意打ちじゃ、なんかフェアじゃないじゃん」

「何それ。自分からキスする人の言う台詞?」


くくっとあたしの頭上で笑いを漏らす遥斗が、今も愛しいと思う。


「キスって、連呼しないでよね……」


こっちが恥ずかしくなる。


あたし、いよいよまずいレベルかな。


「いいよ」


反射的に顔を上げると、遥斗は柔らかい笑みを浮かべていた。


「ほんとは、遥斗を追いかけたいんだけどね」

「じゃあ、勉強しなきゃ」

「たぶん無理だから、諦めるよ」

「簡単に諦めんな」


柔らかい笑みのまま、遥斗の空いている方の手があたしの頭に降ってきた。


「ほんと、遥斗はずるい」

「何が?」


わずかに開いた遥斗の唇を自分のそれで塞ぐ。


あたしの指と遥斗の指を絡ませて、握り締めた。