その指に触れて

泣くのを堪えるように、あたしはため息をついた。


「あたしだってね、遥斗みたいな二重人格の人間が一番嫌いなんだよね」

「二重人格って……さすがにひどくない?」

「人によって、人格変えるとか最低だし」

「嫌いなら、なんで俺に……」

「遥斗っていう人間が好きなんだから、仕方ないよね。性格がどうとか、顔がどうとか、そんな問題じゃない」

「それ、かなり矛盾してるよね」

「秀才のあんたにはわかんないよ。矛盾ばっかりだよ、あたしは」

「秀才をばかにしてんな、それ……」

「ああもう、こんなこと言うつもりじゃなかったっつの」


マジで泣きそうだし。


顔を上げて、空を仰ぐ。大きく息を吸って、深くため息をついた。


「頑張れって、それだけ言って帰るつもりだったのにさあー」

「頑張れ?」

「勉強のことに決まってんでしょ。遥斗が不幸になるとこ、見たいわけないでしょうが」

「そんな、受験くらいで大袈裟な」

「でも、遥斗の人生の重要項目の一つではあるでしょ?」

「そうだけど」

「遥斗が幸せだったらあたしはどうでもいいなんて言えない。でも、不幸になるよりは幸せになってほしい」


あたしは遥斗に近づいた。