その指に触れて

でも、ある日を境に「嫌われても構わない」と思うようになってしまった。


彼が舌をあたしの口の中に入れようとした日。


唇を重ねるだけで一ヵ月耐えた彼を、今となってはすごいと思うけど。


ぬるくねっとりとしたそれがあたしの唇に触れた瞬間、あたしは背筋が凍った。


拒否反応を示したのだ。


彼の舌が歯を割って入ろうとするのを、あたしは必死に食い止めた。


今日はもう営業終了しましたー! 今日はもうおかえりくださいましー!


彼の舌を自分の舌で強制送還したわけだ。まあ、その時点でディープの一歩手前じゃねえかという意見もあるけど。


大阪のパンチパーマのおばちゃんが必死にシャッターを下ろそうとする映像が頭の中に浮かんだくらいだ。


あたしにとってそれくらい嫌なものであった。ディープキスというものは。


それで気を悪くしたであろう彼(当たり前か)はその後あたしと大喧嘩をして、それからお互い何の連絡もしないままあたし達は高校に入学した。


彼とはそれ以来連絡を取っていない。俗に言う自然消滅というやつだった。