その指に触れて

放課後、あたしは四組の教室の前に立っていた。


「じゃあな、遥斗」

「また明日ー」


教室の中から遥斗の声が聞こえてきて、あたしの鼓動は既にうるさい。


ちょっと高めで、通る声なのだ。


重症だよなあ。


あたしの目の前を遥斗が通る。遥斗はあたしに気付いていないらしい。


遥斗は廊下を歩いていく。あたしはそのあとについていった。


玄関で靴を履き替えて、校門を出る。


完全にストーカーだなあなんて、妙な罪悪感を抱えながら遥斗の背中を追いかけた。


遥斗の背中って、今までじっくり見たことなかったけど、意外に広いんだな。


あたしが後ろから抱き着いても、前まで手回らないかも。


背丈も平均はあるから、後ろから抱き着いて前から見てもあたしの姿はわかんないな。


後ろから抱き着いて慌てる遥斗を想像して、一人で笑えてきた。


いや、意外に冷静に対処するのかな、今だったら。


「ストーカー?」


前から声がした。そして、前方の遥斗が振り向く。


あたしはとっさに両手で鞄の持ち手を掴んで、唇を噛み締めた。思い出し笑いも消えていた。